持株会を通じた自社株投資
若かりし頃の投資経験として、個別株、外貨、信用取引の経験についてお話してきました。それらで痛い目に遭ったにもかかわらず(特に痛かったのは、以下の記事に書いた信用取引です…)、性懲りもなく投資をした時のお話をしたいと思います。今回の投資は、またも個別株です。ただし、全く知らないどこかの会社ではありません。自分の勤めていた1社目の株、つまり自社株です。
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ある程度の規模の上場企業であれば、結構な割合で持株会なるものがあるのではないでしょうか。私が勤めていた1社目にも、転職した2社目にもありました。では、持株会のメリットおよびデメリットについて、簡単にお話ししたいと思います。まずメリットですが、自社株を購入する際に、数%の補助がいただけることが最大のメリットですね。あとは、大したメリットではないですが、給与天引きになる点ですね。
デメリットは、好きな時に、好きな量を買えない点でしょう。まず、買うタイミングは持株会の買付日で決まります。そして、購入数量も、給与天引きですので、給与の額で決まってしまいます。しかも最大割合が設定されていました。この買付日や金額の制限は、会社(持株会)によって違うと思います。
また、持株会に限りませんが、自社の株を取引きする際にはデメリットがあります。それは、インサイダー取引の懸念です。例えば、決算発表前の時点で自社の業績がどの程度良くないか知っていたり、自社が非常に有望な新製品の発表を行うことを、事前に知っていたりする場合、自社の株価がどう動くか分かってしまうわけです。そういった立場を利用して、株取引で利益を出してはいけないのです。勿論、そんなポジションには居ませんでしたが、それでもあらぬ疑いをかけられてはいけません。会社としても、自社株の取引禁止期間がありましたね。
リーマンショックの到来
持株会の存在は知っていましたが、具体的にそれを利用して株を購入しようと思ったのは、リーマンショックがきっかけです。信用取引の傷(過去の記事参照)が癒えてきた頃、当時の損失を何とかリスク少なく取り返したいと考えていました。その選択肢の一つとして、持株会の利用を検討していたのです。
数%の購入費用補助がいただけるだけでも、利回り数%が得られるわけで、そのメリットが得られるのは、私にとってはその株だけでした。それだけでも、他の株に比べればリスクが小さいだろうと考えていました。さらに言えば、自分が仕事で会社に貢献することで業績や株価が上がれば、給与以外でもリターンが得られるので、少なからずモチベーションも上げられるという考えもありました。そのような考えから、持株会の手続きだけでもと進めていたところ、まさにリーマンショックが起こったのです。
自社でも、突然プロジェクトが中止になったり、派遣社員さんの契約が更新されにくくなったり、出張経費の削減令など、経費削減の指示が飛び交っていました。これは大変なことになったと、様子を伺っているうちに、自社の株価は、信じられない価格まで下がりました。
これってもう、全資産売却して会社解散した方がいいくらいの株価では?
というレベルに近づいていったのです。それは流石に下がり過ぎだと思いました。一応日本の大企業ですし、一時的に商品が売れないことはあったとしても、商品の特性上、需要はきっと無くならないはずでした。それに、土地や工場といった物的資産は勿論、技術や特許という無形資産も豊富にありましたから、今の株価より大きく下がることはないと判断しました。
そのような考えから、持株会の給与天引き割合とボーナス時の割合を、それぞれ最大値に設定し、自社株に投資することにしたのです。自社が倒産でもしようものなら、職を失うだけでなく、株も紙屑になるという、よくよく考えたら非常にリスキーなことをしていたかもしれませんが、この状態でしばらく景気の変動を見てみることにしました。
リーマンショックからの回復
給与天引きで持株会が持っていきますので、その間は非常に厳しい手取りで生活していました。貯金を少しずつ切り崩しながら。そんな生活を半年以上続けたでしょうか。株価もある程度回復してきたところで、持株会の積立設定を緩めました。その後は皆様ご存じの通り、リーマンショックから数年かけて、元の株価水準まで戻りました。2009年の夏頃には、日経平均も10,000円を回復していたかと思います(2008年10月には、7,000円を切ったこともあるそうです)。
結果的に、私が自社株につぎ込んだ資産も2倍以上に増えまして、信用取引で失った100万円を十分取り戻せたのでした。ちなみに、この時得られた利益ですが、決して散財したわけではありません。
勿論、投資に回したりもしませんでしたよ…。
学生の時に納付を猶予してもらっていた、国民年金の支払いに充てました。大学院の分も含めて、4年分くらい溜まっていましたので、その利益で何とか支払うことができました。無駄遣いせずに済みましたし、良いお金の使い道だったと思います。
勝って兜の緒を締めよ
結果的にうまくいきましたが、十分リスクを検討できていたかと言えば、そうではないです。もっときちんと試算すべきだったと思いますし、もっとリスクについて考え抜かなくてはいけなかったとも思います。利益についても、持株会という制度を利用せず個別株でやった方が、もっと安い時に大量に買えたでしょうし、その結果、数%の補助よりも、利益を最大化することができたでしょう。このように、結果的に投資は成功でしたが、色々と反省点はあります。
そもそも、信用取引の傷を負っていた私が、そんな勝負ができたのは、持株会の補助や、持株会を通じた売買であればインサイダーの懸念はないだろうという安心感が、背中を押してくれたからだと思います。考え抜いた結果、行動できたわけではありません。今回は、たまたまうまくいきまして、結果的に失った100万円を取り戻すことができました。それでも信用取引の恐怖は、良い意味で拭えませんでしたし、このトラウマを、なるべく長く引きずっておくべきだとも思いました。
私の過去の投資話は以上です。その後もちょくちょく投資への興味は刺激されましたが、なんだかんだとFIREを意識し始めるまでは、せっせと貯金する生活を送りました。FIREを意識しだしてからの投資経験については、既に一部お話していますが、勿論続報もあります。
なんだかんだ言いながら、結局色々と手を出しています…。
その後の資産運用のお話はまた別の機会にすることとして、投資のお話が少し続きましたので、今後はFIREやキャリアアップについてのお話を増やしていきたいと思います。