研究者もフリーランスになれるのか
働き方の選択肢を増やすべく、フリーランスという働き方にも注目しています。前回(以下の記事)で少し検討してみましたが、何かあった時に自分を守るお守りとしても役に立つでしょうし、会社に依存しない働き方は非常に魅力的だと感じました。今回は、前例を見ながらもう少しその働き方について調べてみました。
-
関連記事フリーランスへの憧れ
続きを見る
まず、私は研究職ですので、その立場のままフリーランスとなると、ちょっと想像がつきませんでした。イメージとしては、ポスドクが近いように思いますが、憧れのフリーランスに比べると、自由度が全くない気がします。
少し調べてみると、小松正先生という方が、なんと2004年から独立系研究者として働いているということを知りました。web上の記事(以下)を拝見した限り、
大学を辞め興味を持った言語交流研究所の研究員となる
➡ 東京の企業で働く友人からアドバイザリー契約や、プロジェクト単位での仕事受け始める
➡ 外部から仕事が増え、言語交流研究所は業務委託に切り替えて、小松研究事務所を構えて独立
という流れで独立されたそうです。なんと、大学の客員教授でもあるとのことで、大変羨ましい働き方です。
大学教授の立場があれば、論文調べたりもしやすいでしょうし、社会的な信頼もありますよね。研究者としては大変羨ましい…。
その他にも、独立系研究者と呼ばれる方の記事をいくつか拝見しましたが、皆様、興味のあることを突き詰めた結果、そういう立場を取るに至った方がほとんどでした。いずれにせよ、研究者でもフリーランスにはなれるということがわかり、勇気をもらいました。
私のように、「色んなしがらみが面倒だからフリーランスに」という邪な考えで独立されたわけではなかったのが、大きな学びでしたね…。
社内フリーランスという可能性
そんな邪な私にも、小松先生の例から、参考にできるなと思う点がありました。それは、勤務されていた言語交流研究所を業務委託に切り替えられた点です。
「現職を退くけれども、仕事を業務委託として受ける」というのは、とても有効な手段かと思いました。 電通が、社員を個人事業主化させる制度を始めた話は、以前ニュースにもなっていましたので、知ってはいましたが、研究分野でそういったことを体現していらっしゃる方が居たとは知りませんでした。他にも、タニタも同様の考え方を促進しているようで、「社内フリーランス」と呼ばれているようですね。
こういった情報を知った時でも、当時の私はそれを自分のケースに応用できる可能性について、真面目に考えていませんでした。 私の研究分野では、材料や、それを使用したサンプルを試作する必要がありますので、どうしてもラボが必要で、それを業務委託で受けようとすると、ラボを自前で持つ必要があると考えていました。
そういった制約が先に浮かんで、それを解決するアイデアを考えることもしていませんでした。よくよく考えてみると、ラボは会社のものを拝借し、立場だけ会社から独立するという方法も採れるでしょう。ただ、「会社に行きたくない」ということが問題であった場合、これではフリーランスになった意味がないかもしれません。
その場合でも、ラボに行かずとも成立する可能性もあります。実験の規模やボリューム次第ですが、レンタルラボを借りるという手段もありますし、現在では、コロナの影響もあり、テレワークに対する理解も深まったでしょうから、フルリモート(あるいはたまに出社)で業務委託を受けるということも可能かもしれません。作業は作業者の方にお任せして、結果の考察と次のアクションを考える部分に特化するという研究スタイルになりますね。
社内フリーランスの副次的効果
このスタイルのメリットについて考えてみると、研究の本質的な部分にフォーカスできる点かと思います。物品の手配や納品処理、輸出管理、薬品在庫管理、安全活動、居室の掃除、などなど。こういった研究の本質ではない業務から解放される可能性があるかと思います。勿論、業務委託契約の内容次第ですが、これら全てをカバーしなくてはいけないような契約になるとは考えにくいですよね。
実はこれ、とても大きなメリットだと思います。日本の大企業で企業研究者として生きてきた経験からですが、業務時間のうち、上記のような研究の本質ではない部分に取られる時間、かなりありました。残念ながら、少なく見積もっても、ざっくり30%以上はこれだと思います…。不毛な会議なども随分減ることでしょうから、研究に割ける時間は倍以上になる気がします。
想像するだけで気分が上がりますね!
デメリットとしては、自分の経費等を自分で管理する必要は出てきますが、サラリーマンであれば、出張経費や立替払いの経費精算は皆経験しているでしょうから、それと大差ないレベルかと思います。これなら、自分の時間も増えますので、副業や勉強に時間を割け時間が増えます。もしリモートでできるのであれば、さらに通勤時間も削減できますし、通勤のストレスからも解放されます。
もうやるしかないですね!
フリーランスで確保できた時間の使い方
勿論立場は不安定になりますが、それによって生じた自分の時間をうまく投資できるのであれば、十分検討する価値はあるかと思います。秘密保持等の問題がクリアになることが前提ですが、同様の働き方を複数の企業に対してすることも可能かもしれません。そうすることができれば、安定性も増しますし、人脈も増え、その後の仕事を増やしやすくなることもあるでしょう。
こう考えると、なんだかできそうな気がしてくるものです。そうは言っても、小松先生のように、長い期間その立場を維持できるかどうかは、研究分野の流行り廃りもあるので、とても難しいとは感じています。大切なのは、そういったフリーランスである期間に、「いかに自分の時間を有効に投資できるか」、私の解釈では「どれだけその他の可能性を増やせるか」ということかと思います。
勿論、例え短い期間であったとしても、フリーランスとして生きてみたという経験、生きてこれたという自信は大きな財産になることだと思います。早まったことをしそうなくらい、とても興味深い生き方だと思いました。是非選択肢の一つとして、真剣に考えてみたいと思いました。
次回は、金銭的なところまで踏み込んで、もう少し具体的に考えてみたいと思います。